STORY 01

くれたけインプレミアム静岡駅前新築工事

県庁所在地駅前の高層ビル建設
「大胆かつ細心」にやり遂げた2人の俊英
くれたけホテルチェーンの新ブランドとして、期待と注目を集めて静岡市の中心にオープンした、「くれたけインプレミアム静岡駅前」。難易度の高い要素をいくつも抱え、創意工夫と粘り強い実行力が求められる工事に抜擢されたのは、当時34歳と29歳のホープ2人だった。
  • 工事名

    くれたけインプレミアム静岡駅前新築工事

  • 工期

    2013年6月1日~2014年8月31日

  • 構造

    ホテル棟RC12階、立体駐車場38台収容

  • 面積

    建築面積457.20㎡/延床面積4,054.48㎡/敷地面積688.60㎡

プロジェクトメンバー
建築部工事課主任

中山 広樹

建築部工事課主任

前職の建設会社を経て、2007年中村組に入社。本プロジェクトでは作業所長、工事責任者として現場を統括。
建築部工事課

鈴木 隆之

建築部工事課

2006年、中村組に新卒入社。本プロジェクトでは作業所主任として、協力会社の手配や仮設計画、詳細工程の調整などを行い、現場の作業を円滑に進行させる役割を担った。

多くの工夫が求められた、チャレンジングな案件

「どうやって工事を進めていこうか」。静岡駅の至近にオープンする、「くれたけインプレミアム静岡駅前」の工事責任者を務めることになった中山は、パズルにも似た課題に取り組んでいた。「駅前」は、難易度の高い立地の代表例だ。しかも現場は国道1号線沿いで、車や歩行者の交通量がきわめて多い。周囲をビルにはさまれた中、敷地いっぱいを使って、高さ35メートルのホテルと、高さ44メートルの立体駐車場を建てる必要がある。

搬入車両・搬出車両のルートはどうするか。レッカーやポンプ車、資材はどこに置くか……。歩道に足場を築くなど、国交省や警察署と緊密に連絡を取る必要がある要素も多い。そして、その難点をクリアしつつ、タイトな工期を守るために、より効率の良い施工計画に仕上げなければならない。
中山は、それらの問題に精力的に向かっていった。作業所主任として中山をサポートし、二人三脚でプロジェクトにあたった鈴木は、中山の仕事ぶりをこう語る。「とにかく、動きが早い。立ち止まることなく、常に走っているという印象です。現場監督という立場でも、すべての情報が揃っているとは限りませんから、いろいろな人の話に積極的に耳を傾けて、可能性を探った上で決断する。その柔軟な姿勢は、学ぶところが多いです」中山も、建設という仕事の妙味を「唯一の正解ルートがないこと」と表現する。「完成した建物というゴールにたどり着けるのであれば、どんな道を歩んでも構わないと思うんです」
「くれたけインプレミアム静岡駅前」のグランドオープン予定は、2014年9月。すでに計画の段階で、基礎工事が2013年10月末までかかることが見えていた。そのあとに、1階から12階までコンクリートの打設が控えている。すると各フロア、実働10日程度でコンクリートを打っていく必要がある……。

ここでも中山の工夫が続く。ホテルは、2階から12階までほぼ同じ間取り。この特徴をどう活かすかが今回のポイントだった。中山が採用したのはパーマネント工法。在来工法ではスラブ(床の型枠)を外すのに約1ヵ月かかるところを、強度を確認した上で一部のスラブを4日で落として、そのまま上の階に型枠パネルを使いまわすようにした。型枠がなくなれば、内装工事にも早く着手できる。こうして、「1フロアを10日程度の工程で仕上げる」サイクルが可能になった。

着工後も続く、さまざまな苦難

2人を悩ませた困難は、事前に予測できたものだけではない。現場は生き物。工事が始まってからも、想定外の出来事が生じた。まずは土壌の問題。掘ってみると予期せぬ地中障害が見つかり3週間の工事ストップ。お客様のオープン日は決まっている。一も二もなく、中山は地中障害対策により遅れた工期のリカバリーに動いた。

中山:「当初は日曜は休みという工程を組んでいましたが、そうも言っていられなくなりました。日曜も工事を進めれば何とか間に合うかなと計算して、鈴木と私が交替で、週末も出るようにしました」

だが、中山も鈴木も、「気持ちが折れることはなかった」と口を揃える。

中山:「会社が、若い自分たちに任せてくれた以上、やり遂げるしかないですからね。使命感や責任感とでもいうべきものに支えられました」
また、工事をする上で周辺住民とトラブルになりかねない騒音や振動問題、交通規制をかける際の近隣への配慮も怠らなかった。

中山:「工事によって、施主様と周辺住民の方々との関係にヒビが入ったりしたら、建物がどれほどうまく建っていても、その工事は失敗だと思うんです。中村組に任せていただいた以上、決してそのような結果を招いてはいけない」

と語る中山は、毎月末必ず翌月の工程表を隣接建物(テナント含め約50件)に配布し、工事の進捗状況や周辺に影響のある工事を事前に説明した。こうした近隣への配慮を行うことにより、一切の苦情が出ることなく工事を進めることができた。

プロジェクトを成功に導いた、地道な努力

大きな成功を収めることができた、「くれたけインプレミアム静岡駅前」の建設。「でも」と、中山は言う。「ひとつ間違えれば、全然うまくいかなかった可能性だってあると思います」このプロジェクトで中山が心を砕いたのは、徹底した工程管理だった。それぞれの工程でわずかな遅れが生じるだけで、全体の進行はどんどん滞る。それ以上に、現場の士気が下がり、建設会社と協力会社との信頼関係も失われてしまう。逆に「ここの監督の管理はちゃんとしている。日程も決して狂わない」と認められると、「ならば、この現場を優先して対応しよう」という雰囲気になり、やがて、職人同士が連携してどんどん前に進めてくれるようになる。中山が最初から意識していたのは、そういう良い流れをつくることだった。そのために、中山と鈴木が努力を惜しまなかったのは、緻密なコミュニケーションだ。中山は工程表を作るときに、躯体関係の事業者をすべて集めて、事前にすり合わせを行った。決して妥協はしないが、机上の無理なスケジュールを作っても意味がない。そうやって現実的な計画を共有することで、事業者たちと「チーム」という一体感を醸成していった。
中山が、全体工程表から月間工程表へとブレークダウンして、計画を固める。それを実行するための、より具体的な現場の手順を整えるのが、鈴木の役目だった。中山も、「鈴木は几帳面で、緻密な段取りにうまく収めてくれる。安心して任せられた」と、信頼を寄せる。今回の現場には、玄人気質の職人が多数入っていた。意思疎通を怠れば、進捗に支障をきたしかねない。だが鈴木は逆に、こまめなコミュニケーションを積み重ねて職人のやる気を引き出し、中山の組んだ緻密な工程に、血を通わせていった。

鈴木:「2階から12階まで、ほぼ同じ構造とはいえ、進行の段取りは微妙に異なります。下で仕上げにかかっている職人さんもいれば、上で躯体の工事をしている職人さんもいる。正確な進行管理を行うには、職人さん一人一人に声をかけることが大事です。上にあがっていくの大変だな、どうしようかなと頭をよぎることもありましたが(笑)、図面通り、計画通りに進捗しているかを正確に把握するのが、僕らの仕事ですから」

中山:「現場の雰囲気を良くしないと、良い建物はできない。常々、そう思っています。その点、この工事は、いけそうだなという感じを途中でつかむことができました」

中村組の伝統と誇りを背負って

2人の努力と創意工夫は、中村組のノウハウの積み重ねにも支えられた。中山の上司は、くれたけグループの案件を担当した経験が豊富で、有意義なアドバイスを惜しまなかった。

また、こんなエピソードもある。密集した現場で、レッカーやポンプ車の置き場に頭を悩ませていた中山は、ある解決法を思いついた。立体駐車場を基礎だけ作って、そこに砕石を入れたトン袋を敷き詰めて鉄板をかぶせれば、作業構台代わりになる。そこにポンプ車を乗せて、ホテル棟の工事をすれば良い……。この「パズル」の解法に知恵を貸してくれたのが、社内の土木部の同僚だった。最前線で奮闘する2人を、会社も後押ししていた。

普段は地元・浜松に密着した案件を手掛けることが多い2人だけに、今回の工事は、事業者や駐車場の手配でも、勝手が違うことがしばしばだった。
中山:「富士市にある同名の会社と間違われたりするので、その誤解を解くところから始まったり。説明しなくて済むように、“静岡県浜松市”と本社所在地が入った特注の社名シートを作りました(笑)」だが、そんな「アウェー」に、2人は確かな足跡を記した。完成後に、グループの社長から「今までのホテルの中で一番良い出来栄えです」と、ねぎらいの言葉をかけてもらったのだ。

鈴木:「やはり、お施主様に喜んでいただけるのが一番ですね」

中山の構想力とリーダーシップ。そして、鈴木の細やかさと粘り強さ。それぞれの長所を持つ2人の歯車がしっかりとかみ合い、このプロジェクトは実を結んだ。

中山:「自分たちのキャリアにおいても、特別な意味を持つ案件になりました。今でも写真を見るたびに、“当時34歳と29歳の2人で、よく完成できたな”と、達成感で胸が一杯になります」

今後の2人は、後輩を指導する立場に回ることも多そうだが、それでも「機会があれば、また一緒に組んでみたい」と言う。さらにパワーアップした、ストーリーの第2章がつづられる日は、案外近くに来ているのかもしれない。